やあやあ、久しぶりだね。今日はおじさんがずっと語りたかった話をしようと思うよ。

そう、すき焼きさ。

なんで今さら?って思ったかい?いやいや、最近ちょっと面白いことになってるんだよ、すき焼きの世界が。あの「関西風が下火になってきた」なんて話が出てきてね。長年すき焼きを愛してきたおじさんとしては、黙ってられないわけだよ。


そもそも「すき焼き」ってどこから来たの?

まあ、聞いてくれよ。すき焼きの名前の由来から入ろうか。

「すき焼き」の「すき」というのは、農作業で土を耕す農具の「鋤(すき)」のことなんだ。江戸時代末期、農家の人たちが畑仕事の合間に、使わない鋤の金属部分を鉄板代わりにして、豆腐や肉を焼いて食べていた——それが始まりとされているよ。いわば、農民のアウトドア料理だったわけさ。

もともとは関西発祥の料理なんだけど、これが全国に広まる大きな転機になったのが、1923年の関東大震災だ。震災で多くの人が移動・避難し、関西風すき焼きの文化が関東にも伝わった。それから約100年、今では「寿司」「天ぷら」と並んで世界に知られる日本の伝統料理になったわけだよ。


関西風vs関東風、何が違うのか

ここが本題さ。実はすき焼きには大きく分けて2つの流儀がある。

関西風:まず肉を「焼く」

関西風は文字通り、牛肉を最初に鍋で焼くスタイルだ。焼いた肉に砂糖と醤油で直接味をつけて、そこから野菜を加えていく。割り下(わりした)は使わない。肉の旨味を最大限に引き出す、どこか豪快な手法だよ。

関東風:「割り下」で煮る

一方の関東風は、割り下という調合済みの煮汁を使う。割り下とはみりん・醤油・酒・砂糖をあらかじめ合わせた液体で、これを鍋に張って肉も野菜も一緒に煮ていく。味が均一に整いやすく、食べ慣れた安心感があるんだね。

で、最近の話に戻ると、AERA DIGITALなどが報じているように、関西風のお店が減りつつあるんだよ。関東風の「割り下文化」が全国的に定着しただけでなく、甘辛タレを使った韓国風すき焼きまで登場して、すき焼きの世界は今、三つ巴の競争になっているんだ。

おじさんの豆知識コーナー:「割り下」はどこで生まれたか

ちょっと聞いてくれよ、割り下のうんちくを。

関東でなぜ割り下が発達したかというと、関東大震災以降に関西風すき焼きを受け入れた東京の料理人たちが、安定した味を出すために工夫した結果と言われているんだ。関西風は料理人の腕と素材の質がモロに出る一方、割り下を使えば素人でも一定の味が再現できる。

割り下の基本比率は醤油1:みりん1:酒1に砂糖少々とされているが、名店はそれぞれ独自の配合を持っていてね。東京・人形町の老舗「日山(ひやま)」は1922年に食肉販売店として創業し、現在はミシュラン一つ星を獲得した名店だが、「特製の割り下」にこだわっていることで知られているよ。すき焼きコースは「松」で14,040円、「竹」で11,880円、「梅」で9,720円という本格派だ。


老舗の世界:東京のすき焼き名店事情

おじさん的に外せない話が、東京のすき焼き老舗の歴史だよ。

人形町「日山(ひやま)」

1922年創業、人形町駅から徒歩わずか2分にある「日山」は、ミシュラン一つ星を獲得した東京を代表するすき焼き割烹だ。仲居さんが一枚一枚肉を焼いてくれるスタイルで、松茸や三つ葉など季節野菜を使うのが特徴。春菊は使わないというのがこだわりだよ。店内の座敷には掛け軸や生花が飾られ、増築を重ねた廊下の段差に歴史を感じられる。

丸の内「豚捨(とんすて)」

明治42年(1909年)創業の老舗精肉店が営む「豚捨 丸の内店」は、東京駅から徒歩3分の好立地だ。生後30ヶ月以上の未経産の雌牛のみを「伊勢肉」として使うという品質へのこだわりが光る。関西風すき焼きを現代に伝える貴重なお店のひとつさ。


韓国風が来ている理由

おじさんに言わせれば、韓国風すき焼きの台頭は決して「外来の侵入」じゃないんだよ。

そもそも日本と韓国の牛肉料理文化には共通の歴史的背景がある。甘辛タレで牛肉を食べるスタイルは韓国の伝統料理「プルコギ」と共通する要素を持っていて、焼肉文化の浸透とともに若い世代を中心に受け入れられている。割り下よりも甘辛タレのほうがご飯に合いやすいと感じる人も多いようでね、家庭料理化が進んでいるということかもしれないよ。


卵をつける文化はいつから?

せっかくだからもう一つうんちくをどうぞ。

すき焼きに生卵をつけて食べる習慣は、実は関東発祥という説が有力だ。熱々の肉を卵でくぐらせることで温度を下げて食べやすくする、という実用的な理由があったとされている。関西では卵をつけずにそのまま食べる派も根強く残っていてね、食べ方ひとつにも東西の文化が出るんだよ。

食べログのデータによると、東京だけでもすき焼き・しゃぶしゃぶ関連の登録店舗数は416件以上(2024年時点)にのぼる。それだけ需要がある料理なんだということだよ。


まとめ:すき焼きはまだまだ進化中

やあ、長々と付き合ってくれてありがとうね。

1923年の関東大震災をきっかけに全国化し、関東風・関西風として100年近く共存してきたすき焼きが、今また韓国風という新しい流れに揺れている。老舗の関西風が「下火」と言われるのは少し寂しいけれど、これも食文化の進化のひとつさ。

おじさんとしては、ぜひ一度、関東風・関西風・韓国風それぞれを食べ比べてみてほしいんだよ。1922年創業の日山で本格関東割り下を味わうもよし、1909年創業の豚捨で関西風を楽しむもよし。食べてみて初めて「あ、これが違いか」ってわかるものだからね。

まあ、すき焼きひとつとっても、こんなに深い歴史があるわけだよ。日本の食卓って、本当に面白いだろう?