やあやあ、うんちくおじさんだよ。今日はちょっとおもしろい話があってね、まあ座って聞いてくれよ。
最近、音楽好きの知人に「ヨルシカって知ってますか?」って聞かれてね。おじさんもちゃんと調べてみたら、これがまあ一筋縄ではいかないアーティストでさ。音楽の話をしているはずが、いつの間にか文学の話になってしまったんだよ。
ヨルシカって何者だ?
ヨルシカは、コンポーザー・作詞家のn-bunaと、ボーカルのsuisからなる2人組の音楽ユニットだよ。歌詞サイト「歌ネット」には現在85曲もの楽曲が登録されていて、その数からも活動の充実ぶりが伝わってくるね。
最新曲のラインナップを見ると「あぶく」「茜」「櫂」「千鳥」と、曲のタイトルだけでも詩情が漂っている。歌詞を少し覗いてみると「どうしようもないほどに私に蠢く獣」「滑稽なペダンチスムだけ」といった哲学的な言葉が並んでいて、ただのポップミュージックではないことがすぐにわかるよ。
「二人称」— CDでもダウンロードでもない、封筒と手紙のアルバム
2026年2月26日、ヨルシカは「二人称」という作品を発売した。でもこれ、普通の音楽アルバムじゃないんだ。
なんと書簡型小説なんだよ。外箱(315㎜×315㎜×55㎜)の中に、封筒が32通、手紙が約170枚も入っている。発行元は講談社で、価格は7,700円(税込8,470円)。ISBN978-4-06-541634-1という書籍コードもついた、れっきとした「本」なんだよ。
物語の内容はこうだ。「チラシを拝見しました。もしよろしければ、僕の作品を添削していただけないでしょうか?」という一通の手紙から始まった、詩を書く少年と文学に詳しい「先生」の奇妙な文通の物語さ。実際の封筒を一通ずつ開けながら読み進める体験型の小説なんだ。
そして2026年3月4日には、同名のデジタルアルバム「二人称」の配信もスタート。「早朝、郵便受け」から始まり「雲になる」「魔性」「プレイシック」「ポスト春」「太陽」「修羅」「火星人」「千鳥」「櫂」「海へ」など、全22曲が収録されているよ。
ライブツアー・展覧会・海外イベントと、2026年は大充実
おじさんに言わせれば、今年のヨルシカはとにかく動きが激しいよ。
LIVE TOUR 2026「一人称」と名付けられたライブツアーが現在開催中で、2026年4月15日には大阪公演のグッズ会場先行販売情報が案内されている。アルバムタイトルが「二人称」で、ツアー名が「一人称」というのも、なんとも文学的な遊び心があるよね。
さらに2026年4月23日には、「二人称展」を東京・大阪で開催するという発表があった。書簡型小説の世界観を体感できる展覧会だよ。
そして驚くことに、2026年4月30日には韓国・ソウルで「BlueCabinet meets Yorushika ‘Second Person’」というイベントまで開催されたんだ。ヨルシカの音楽が国境を越えている証拠だよ。
なぜヨルシカは海外でも人気なのか
SpotifyやApple Musicの普及で、言語の壁を超えて音楽が届くようになった。特にヨルシカの楽曲は文学的な世界観と耽美な音楽性が特徴で、日本語の音の響きそのものが一種の「音楽的な素材」として海外のリスナーにも受け入れられているんだよ。
n-bunaはボカロP出身、という話
ちょっと聞いてくれよ、n-bunaがヨルシカを結成する前はニコニコ動画で「ナブナ」というP名でボーカロイド楽曲を投稿していたボカロPだったって話をね。当時から詩的な歌詞と繊細なサウンドで注目を集めていて、その才能がそのままヨルシカという形に結実したんだ。
ボカロシーンから生まれたアーティストが、書簡体小説を書いて、全22曲の大型アルバムを発表して、韓国でもイベントを開催するまでになった。2010年代のインターネット音楽シーンが生み出した才能が、2026年には世界規模で花開いているというわけだよ。
まとめ
封筒を一通ずつ開けながら物語を読む。22曲の音楽と170枚の手紙が連動した世界観。デジタル全盛の時代に、意図的に「アナログな体験」を作り出しているんだよ、ヨルシカは。
音楽と文学の境界線って、こんなにクリエイティブに崩せるものなんだなあっておじさんは思ったよ。書簡型小説「二人称」と、デジタルアルバム「二人称」。両方体験してみてくれよ。きっと何か新しいものが見えてくるはずだからさ。
おじさんのうんちくコーナー:書簡体小説の歴史
手紙形式で書かれた小説を「書簡体小説(しょかんたいしょうせつ)」と言うんだけど、これ、文学の歴史においてかなり由緒ある形式なんだよ。
有名なところでは、ゲーテが1774年に発表した「若きウェルテルの悩み」がある。当時ヨーロッパ全土でベストセラーになって、主人公に感化された若者たちの模倣自殺が相次いだという逸話が残るほど、時代の心に刺さった形式さ。
日本でも夏目漱石の「こころ」(1914年)の後半部分が書簡体で書かれているし、最近では村上春樹作品にも書簡的な表現が多く使われている。現代の音楽アーティストがこの古典的な形式を使って作品を発表するというのは、なかなか粋な試みだとおじさんは思うよ。