やあやあ、今日はおじさんがちょっといい話を持ってきたよ。
最近、産経新聞の連載「話の肖像画」で上村春樹さんのインタビューが続いているんだけど、これがまた面白いんだよ。居酒屋での説得劇、2年間固辞し続けた講道館長就任の話……柔道界のレジェンドにこんな人間くさい裏話があったとはね。
上村春樹とは何者か?
1951年2月14日生まれ、熊本県宇城市出身の上村春樹さんは、日本柔道界が誇るレジェンドだよ。身長174cm、全盛期の体重103kgという「重量級としては小柄」なスペックで世界の頂点に立った選手だ。
主な戦績を見るとこんな感じだよ:
- 1973年:全日本柔道選手権 優勝、世界選手権(スイス・ローザンヌ)無差別級 2位
- 1975年:全日本柔道選手権 優勝、世界選手権(オーストリア・ウィーン)無差別級 優勝
- 1976年:モントリオール五輪 柔道無差別級 金メダル
おじさんに言わせれば、この記録は本当に驚異的だよ。「外国人選手には通用しない」なんて言われていたのにね。
身長213cm・169kgの怪物との初戦
1976年のモントリオール五輪、上村さんの初戦の相手は北朝鮮のパク選手だった。この選手がとてつもない体格でね、身長213cm、体重169kgという規格外のサイズなんだよ。
上村さんが後にこう語っているんだ。「相対してみると、私の目線の先に相手のへそがある」ってね。
ちょっと想像してみてくれよ。174cmの上村さんが正面を向くと、相手のへそが目線の高さにある。つまり頭はさらにはるか上にあるわけだ。しかもこのパク選手、2年前の国際大会では体重150kgだったのが、2年間で約20kgも増量していたというから驚きだよ。「抑え込もうとしても手が届かない」という状況で、それでも上村さんは大内刈でポイントを奪い勝利した。
その後もフランスのルージェ選手(前年の世界選手権王者)、ソ連のチョチョシビリ選手(前回ミュンヘン五輪金メダリスト)と強敵を次々と撃破。決勝ではイギリスのレムフリー選手(ヨーロッパチャンピオン、身長190cm近く・体重115kg)を大内刈から抑え込みで一本勝ちして金メダルを獲得したんだよ。
居酒屋で決まった講道館長就任
2009年(平成21年)、上村さんは講道館長と全日本柔道連盟(全柔連)会長に相次いで就任する。ところが講道館長については約2年間、固辞し続けたという裏話があるんだよ。
理由はふたつあった。ひとつは、それまで競技団体である全柔連で主に選手強化の仕事をしてきたため、教育団体である講道館の歴史や精神について「詳しくない」という自覚があったこと。
もうひとつは、講道館長は上村さんで5代目なんだが、初代の嘉納治五郎師範から4代目までは全員「嘉納家」かゆかりの方々だったこと。「熊本のいなかから出てきた私でいいのだろうか」という気持ちがあったわけだよ。
決断のきっかけは、4代目館長の嘉納行光さん(1932〜2020年、嘉納治五郎師範の孫で全柔連会長なども歴任)に居酒屋に呼び出されてのことだった。お酒好きだった嘉納行光さんと酒を酌み交わしながら、「いいかげん、覚悟を決めろ。勉強はこれからすればいいんだよ」と一喝されてね。そこで上村さんは「これはもう断れないな」と決心したというわけだよ。
こういう人情の場面が歴史を動かすんだよなあ、おじさんはそこが好きだよ。
就任後に痛感した柔道への無知
館長就任後、上村さんは柔道について改めて勉強し直したというんだが、「これまで柔道というものをいかに知らないままここまで来たのか」と痛感させられたと語っているよ。全柔連会長も兼務し、2008年北京五輪では選手団総監督として日本代表を率い、日本は金メダル9つ(うち柔道で男女4つ)という成果を残した。
世界199か国に広がった柔道
おじさん的に面白い数字があってね。嘉納治五郎師範が1882年に創始した柔道は、現在、国際柔道連盟に199の国と地域が加盟するまでになっているんだよ。
比べてみるとよくわかる。IOC(国際オリンピック委員会)が205、FIFA(国際サッカー連盟)が208の国・地域の加盟数だから、140年ちょっとの歴史しかない柔道がここまで広まったのは、やっぱり「JUDO」として世界に受け入れられた証拠だよ。
まとめ
ちょっと聞いてくれよ。上村春樹さんの話を深掘りすると、「柔道の技術」だけじゃなく、「知らないことへの謙虚さ」や「人情で動く決断」みたいなものが見えてくるんだよなあ。
身長213cmの相手と戦い金メダルを獲り、2年間固辞した大役を居酒屋の一喝で引き受け、就任後は「柔道を知らなかった」と猛勉強する。こういう人間くさいところが、おじさんには刺さるんだよ。
君も、上村さんみたいな「知らないことを認める勇気」、持ってみないかい?
おじさんの豆知識コーナー
まあ聞いてくれよ。1976年モントリオール五輪で日本柔道が金メダルを3つ獲ったんだが、面白いことがあってね。上村春樹さん(無差別級)、二宮和弘さん(軽重量級)、園田勇さん(中量級)の3人の金メダリストがなんと全員、九州在住で地方に拠点を置く選手だったんだよ。当時は「柔道の強豪は東京・大阪から」という暗黙の風潮があったんだが、この3人が「工夫すれば地方でも世界に勝てる」ことを証明してしまったわけだ。これ以降、東京や大阪の強豪にこだわる風潮が変わったと上村さん自身が語っているよ。地方出身者の底力って、すごいだろう?