やあやあ、まあ椅子に座って聞いてくれよ。今日はおじさん、ちょっと感慨深い話をしたくてね。

演歌歌手・坂本冬美さんがデビュー40周年を迎えたんだ。40年だよ、40年!おじさんが若かりし頃に「あばれ太鼓」がラジオから流れてきたのを今でも覚えてるよ。あの声は一度聴いたら忘れられない。

坂本冬美という人物、ちゃんと知ってるかい?

坂本冬美さんは1967年3月30日、和歌山県美浜町生まれ。1986年に19歳でシングル「あばれ太鼓」でデビューしてから、ずっと第一線を走り続けてきた演歌界の至宝さ。

デビュー曲「あばれ太鼓」はいきなりオリコンチャートに登場し、翌1987年には日本レコード大賞・新人賞を受賞。その後も「夜桜お七」「また君に恋してる」「火の国の女」など数多くのヒット曲を世に送り出してきた。

特に2008年にリリースした「また君に恋してる」は演歌ファンだけじゃなく、ビリー・バンバンのカバーとしても話題になって、オリコン週間シングルランキングで演歌歌手として異例のトップ10入りを果たした一曲だよ。

恩師・猪俣公章の命日に捧げたベストアルバム

ここからがおじさん的に一番グッときた話なんだけどね。

2026年4月にリリースされた40周年記念ベストアルバム、そのリリース日が恩師・猪俣公章さんの命日に合わせられているんだ。坂本さんは「育てていただきまして心より感謝」とコメントしていてね、40年経った今もその絆は変わらないんだよ。

猪俣公章さんは1934年生まれの作曲家で、「天城越え」「夢芝居」「そんな女のひとりごと」など昭和演歌の名曲を数多く手がけた大御所中の大御所。坂本さんのデビュー曲「あばれ太鼓」も猪俣さんの作曲だったんだ。1994年6月26日に59歳で亡くなるまで、坂本さんの才能を見出し、磨き上げた張本人さ。

今回の記念ベストアルバムは演歌とPOPSの2枚組で、全32曲という堂々のボリューム。40年のキャリアから厳選された楽曲が並んでいて、演歌ファンはもちろん、「また君に恋してる」で初めて坂本さんを知った若い世代にも届けたい一枚だよ。

おじさんが教える、演歌の世界の豆知識

演歌はいつ生まれたのか?

せっかくだから演歌そのものについても語らせてくれよ。

「演歌」という言葉の起源、実は明治時代にさかのぼるんだ。自由民権運動が盛んだった1870〜1880年代、街頭で政治的な主張を歌にして訴える「演説歌」が生まれた。これが縮まって「演歌」になったというのが有力な説だよ。

今の演歌のスタイル、つまりこぶしを効かせた歌唱法と望郷・恋愛・離別のテーマが定着したのは戦後から1960〜70年代にかけて。古賀政男、船村徹、猪俣公章といった大作曲家たちが様式を確立したんだ。

ヨナ抜き音階の秘密

それからこれも覚えておいてほしいんだけど、演歌の独特の響きは「ヨナ抜き音階」から来ているんだよ。

ドレミファソラシドの中で、4番目の「ファ(四)」と7番目の「シ(七)」を抜いた5音階を使う——だから「四七(ヨナ)抜き」。この音階は江戸時代の邦楽にルーツがあって、日本人が本能的に「懐かしい」「切ない」と感じる音の並びなんだ。坂本さんのこぶしが心に刺さるのも、この音階の魔法があってこそだよ。

おじさん豆知識コーナー:演歌の「こぶし」って何だ?

「こぶし」というのは、一つの音符の中で音程を細かく上下させる歌唱技法のことさ。漢字で書くと「拳」。諸説あるけれど、拳を握って力を込めて発声する様子から来たとも言われているよ。

こぶしは日本の伝統芸能・民謡に古くから使われてきた技法で、津軽三味線や民謡の世界では必須のスキル。演歌歌手がこぶしをマスターするには最低でも数年の修行が必要と言われていて、坂本冬美さんも十代の頃から猪俣公章さんの指導のもと、徹底的に鍛え上げられたんだ。

ちなみに韓国の「トロット」という大衆歌謡も似たような技法を使っていて、日本の演歌と相互に影響し合ってきた歴史があるよ。BTS全盛の今のK-POPシーンでも、トロットは2020年代に入って若い世代にリバイバルブームが起きていて、2020年のオーディション番組「미스터트롯」が同時間帯視聴率35%超えを記録したほど人気なんだ。演歌とトロット、国境を越えた共鳴があるんだよ。

40年という数字が持つ重み

おじさんに言わせれば、芸能の世界で40年第一線に立ち続けるというのは、並大抵のことじゃないよ。

デビューした1986年といえば、バブル景気が始まりかけていた時代。その年にデビューして、バブル崩壊も、CDからストリーミングへの移行も、演歌人気の凋落もぜんぶ経験しながら、それでもステージに立ち続けてきた。

坂本さんは紅白歌合戦にも1988年から連続出場を重ねてきた常連歌手で、そのキャリアは日本の音楽史そのものと言っても過言じゃない。

まとめ:歌は時代を超えていく

ちょっと聞いてくれよ、最後に一言だけ。

坂本冬美さんが40年経った今も恩師・猪俣公章さんへの感謝を忘れずにいること、そしてその命日にベストアルバムをリリースするという粋な計らい——これが芸の道というもんだよ。

32曲入りのベストアルバムは、40年分の「ありがとう」が詰まった一枚さ。演歌を普段聴かない人も、この機会にちょっと耳を傾けてみてほしい。あのこぶしには、日本人のDNAに響く何かがきっとあるから。

おじさんは今夜、「夜桜お七」でも聴きながら一杯やろうと思ってるよ。君もどうだい?