やあやあ、まあちょっと聞いてくれよ。
2026年4月4日、北海道の稚内市沖に浮かぶ無人島・弁天島付近の海で、ダイバー9人が行方不明になるという大きな事故が起きたんだ。「トドウォッチング」を目的にダイビングに入った人たちが、午前10時に浮上する予定だったのに上がってこない、という通報から捜索が始まったわけさ。続報では8人が救助されたと伝えられているけど、残りの行方はまだ捜索が続いている状態だよ。
この話、単なる事故ニュースで終わらせるにはもったいない。弁天島という場所にも、トドという生き物にも、北の海ダイビングにも、おじさん的に語るべきうんちくが山ほど詰まってるんだ。
稚内・弁天島ってどんな場所なんだ?
稚内市は北緯45度付近、日本最北端の市として知られていて、人口は約2万6000人(2024年時点)。宗谷岬からロシアのサハリンまでの距離はわずか約43kmという、まさに日本の果ての町さ。
事故が起きた弁天島は、その稚内市の沖合に浮かぶ無人島で、「トドの生息地」として地元では有名な場所なんだ。日本海側に位置するこのエリア、冬から春にかけては流氷の影響も受ける極めて厳しい海域でもあるよ。
実は「弁天島」って日本に何十個もある!
ここでちょっと寄り道させてくれ。「弁天島」という名前の島、日本全国にいくつあるか知ってるかい?
実は北海道だけで複数、全国では数十か所以上にこの名前の島が存在するんだ。有名どころでは静岡県浜名湖に浮かぶ弁天島があって、こちらは大正時代に建設された赤い鳥居が湖面に映える観光地として人気で、年間観光客は数十万人を超える。
なぜこれほど多いかというと、「弁天島」という名前の由来が弁財天(べんざいてん)を祀る島だから。弁財天とはもともとインドのヒンドゥー教の女神サラスヴァティーが仏教を通じて日本に伝わったもので、「水・音楽・弁舌・財宝」を司るとされ、海や川や湖の近くに祀られることが多かったんだ。だから全国の水辺に「弁天島」が乱立する結果になったわけさ。1000年以上かけて広まった信仰の痕跡が地名に残ってるって、なかなかロマンがあるだろう?
トドウォッチングって何なんだ?
今回の事故の目的だった「トドウォッチング」。トドは正式名称をアシカ科トド属(学名:Eumetopias jubatus)といって、アシカの仲間では世界最大の種なんだよ。
オスは体長最大3.3メートル、体重は最大1120キログラムにもなる。メスでも体長2.5メートル、体重300キログラム程度。これはホッキョクグマの大型個体と同程度の体重だから、どれだけ巨大かわかるだろう?
トドは毎年11月頃から翌年3月〜4月にかけて北海道の沿岸に回遊してくるんだ。稚内周辺はその代表的な飛来地のひとつで、弁天島付近の岩礁はトドが集まる場所として知られている。水中でトドと間近に遭遇できる「トドウォッチングダイビング」は、ダイバーたちの間でも特別な体験として人気があるんだよ。
北の海のダイビングが危険な理由
おじさんに言わせれば、今回の事故は「北の海の恐ろしさ」を改めて教えてくれた出来事でもあるんだよ。
水温・潮流・視界の三重苦
稚内沖の4月の水温は約5〜8度前後。これはドライスーツが必須の極寒水域で、万全の装備なしでは数分で低体温症になりかねない。くわえて日本海は潮流の変化が激しく、岩礁地帯では渦流が発生しやすい。透明度も季節や天候によって大きく変わるから、同じグループのダイバー同士がはぐれると一気に危険な状況になってしまうんだ。
「午前10時に浮上するはずが上がってこない」
今回の通報はまさにこのケースで、計画通りの浮上時刻に誰も上がってこなかったことで異変が発覚した。ダイビングでは「バディシステム」と「ダイブプラン(潜水計画)」が安全の基本中の基本で、事前に潜水深度・潜水時間・浮上ポイントを明確にしておくことが生死を分けることがある。8人が救助されたという続報は一安心だけど、残る行方不明者の早期発見を祈るばかりだよ。
まとめ——北の海はロマンと危険が隣り合わせ
まあ、今日話したことをまとめると——弁天島という名前ひとつとっても1000年以上の信仰の歴史があって、トドという生き物もまた人間と複雑な関係を持ちながら生きている。そして稚内の海は、そのスケールの大きさと引き換えに並外れた危険も秘めているということだね。
今回の事故で救助された8人が無事に回復し、残る1人も一刻も早く見つかることを心から願っている。
自然の中でのアクティビティは、十分な準備と謙虚さが何より大切さ。おじさんからのお節介を最後に一言——海を、山を、自然をなめちゃいけないよ。じゃあまた、うんちくを仕入れてきたら話してあげるからな。
おじさん豆知識:トドと漁業の長い対立の歴史
トドはサケやタラを大量に食べることから、北海道の漁業者との間で長年にわたる「トド問題」が続いてきたんだ。1頭のトドが1日に食べる魚の量は最大で約30〜40キログラムとも言われていて、定置網を破いたり水揚げ前の魚を食い荒らしたりする被害は年間で数億円規模に上ると報告されている。
一方でトドは国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで危急種(VU)に指定されており、北西太平洋の個体群は1990年代以降に急減して保護が必要とされてきた経緯がある。日本では環境省と水産庁が協力して個体数調査を行っており、「保護」と「漁業被害対策」の両立が大きな課題になっているんだ。観光資源でもあり、害獣でもある——トドはそんな複雑な立場の生き物なのさ。