やあやあ、今日はちょっと日立製作所の話をしようじゃないか。最近、日立の株が市場でえらく注目を集めているんだが、その裏側にはなかなか面白い話があるんだよ。おじさん、少し付き合ってくれよ。

36年ぶりの「実質無借金」達成——これが何を意味するか

まずは本題から入ろう。2026年、日立製作所が実に36年ぶりの実質無借金を達成したと、日本経済新聞が報じているんだよ。

36年前といえば1990年、ちょうどバブル経済の絶頂期だ。株も土地も何もかもが狂乱していたあの時代に無借金だった日立が、バブル崩壊・リーマンショック・デジタル化という三つの大波を乗り越えて、ようやく同じステージに戻ってきたわけさ。これは素直に「すごいこと」じゃないか。

ただ、同紙の見出しには「憂鬱」という言葉も踊っている。無借金になったのに憂鬱とはどういうことか——そこが今日のポイントだよ。

ソニーと日立、「5000億円自社株買い」の衝撃

日本経済新聞は日立を「電機の優等生」と表現しつつ、ソニーと日立がそれぞれ5000億円規模の自社株買いを発表したことを伝えている。

自社株買いというのはね、会社が市場に出回っている自分の株を買い戻すことだよ。流通している株の数が減るから、一株あたりの価値が上がる。つまり株主へのご褒美みたいなものさ。5000億円というのは兆の手前、相当な規模だよ。

ところが同紙の記事には「見えぬ投資先」という気になる表現も出てくる。潤沢な資金があるなら、自社株買いだけでなく新技術や新事業に投資すべきではないか——市場はそう問いかけているんだ。無借金で手元資金もある。では次はどこへ向かうのか。それが株価の焦点になっているわけさ。

おじさんのうんちくコーナー:日立の「奇跡の復活劇」

今の日立の姿を見ると、おじさんは感慨深いものがあるよ。

2009年度、日立製作所は当時の日本製造業として最大規模となる最終赤字7873億円を記録した。リーマンショックの直撃を受けた年だ。それまで「日立あってこそ」と言われた多角経営が一気に重荷になったわけさ。

この大赤字をきっかけに、日立は大胆なリストラを断行した。かつては日立金属・日立化成(現レゾナック)・日立建機など22社以上あった上場子会社を次々と整理・売却したんだ。「何でもある日立」から「社会インフラとITに集中する日立」へと大転換を図った。

象徴的だったのが2021年のGlobalLogic買収だ。約9600億円を投じてアメリカのデジタルエンジニアリング企業を傘下に収め、DX(デジタルトランスフォーメーション)分野での世界展開を加速させた。この買収が今日の収益力向上につながっているんだよ。7873億円の赤字から、約15年で無借金へ——なかなかドラマチックだろう?

日立製作所という会社の来歴

せっかくだから、日立の歴史も少し話させてくれよ。

日立製作所は1910年、小平浪平(おだいら なみへい)が茨城県の鉱山で電気修理工場を立ち上げたのが始まりだ。最初は5馬力の電動機を自ら設計・製造するところからスタートして、やがて重電・家電・ITの巨人へと成長した。

面白いのは、「日立市」という地名そのものが日立製作所の存在から生まれたことだよ。1939年、工場城下町として茨城県の複数の町村が合併して「日立市」が誕生したんだ。会社が地名になるというのは、よほど地域に根付いていた証拠さ。現在の日立市の人口は約16万人で、今もグループの大きな拠点が残っている。

ROEって何?おじさん流に解説しよう

記事に「攻めのROE政策」という言葉が出てくるんだが、ROEについてもう少し説明しておこうか。

ROEとはReturn on Equity(株主資本利益率)の略だ。たとえば君が100万円を日立に投資したとして、1年後に10万円の利益が生まれたなら、ROEは10%ということになる。

かつて日本企業全体のROEは5〜6%程度と低かったんだが、東京証券取引所が2023年ごろから「PBR(株価純資産倍率)1倍割れ企業は改善策を開示せよ」と各社に求めるようになってから、ROE改善の動きが加速した。自社株買いはROEを上げる手っ取り早い方法のひとつで、ソニーや日立のような大企業が一斉に動いた背景にはこうした流れがあるんだよ。

「無借金の憂鬱」という見出しの意味もここで分かってくる。借金がないということは、借金返済のプレッシャーがない代わりに、資金を積極的に使って利益を生む力(ROE)を高める義務も生まれるということさ。

まとめ:無借金は「ゴール」じゃなく「スタート」

さて、長々と話してきたが、まとめるとこういうことだ。

日立が36年ぶり無借金を達成できたのは、2009年の7873億円赤字をバネにした約15年間の大改革——子会社の整理、GlobalLogicへの9600億円投資、社会インフラ事業への集中——があってこそだよ。そして今、5000億円の自社株買いで株主に還元しつつ、市場からは「次の成長への投資先を見せてくれ」と問われている段階にある。

株価が注目されているのは、この「守り」と「攻め」のバランスをどう取るか、日立の経営陣が市場に答えを出す局面に来ているからさ。

1910年の電動機修理工場から始まり、バブル崩壊も、7873億円の赤字も乗り越えてきた底力はホンモノだよ。おじさんとしては、次の一手を楽しみに見守っていこうと思っているんだ。君も日立の株価動向、ちょっと気にしてみてくれよ。